新卒一括採用の功罪

Q.新卒一括採用を廃止すれば、雇用環境がよくなるのでしょうか?

A.功罪ありますが、若年失業率が高くなる可能性があります。

 新卒一括採用の廃止論者の方がいらっしゃいます。学校を卒業するタイミングで就職できないと正社員になれず非正規労働者として一生働くことになりかねない、などの指摘です。一理あるとは思いますが、大きな弊害を伴うでしょう。日本の雇用慣行として知られる新卒一括採用は、若年失業率を低く抑えることに貢献しているからです。

 OECDのデータベース*では、簡単に失業率を調べることができます。比較可能な最新データについて、先進7カ国の若年失業率(15~24歳)を低い順に並べると、日4.6%、独6.9%、米9.7%、英12.6%、加13.5%、仏18.9%、伊29.7%になっています。若年失業率が高いことに驚かされます。この中では、日本とドイツが比較的低い位置づけになっています。日本は新卒一括採用、ドイツは「デュアル・システム」の影響が大きいといわれています。デュアル・システムは、学校に通いながら企業内で職業訓練を受ける本格的なもので、いわば“手に職をつける”といってもよいでしょう。ジョブ型雇用が中心にある欧米では、仕事経験のない学生は敬遠されることがあるため、デュアル・システムは若年失業率の抑制に貢献しているようです。仮に、ドイツのような方策もなしに、日本が新卒一括採用をやめてしまうと、欧米と並ぶような若年失業率になる可能性があります。

 新卒一括採用には弊害もありますが、世界に誇る日本の慣行だといってよいのではないでしょうか。そして、この慣行を支えているのが企業の人事担当者なのです。自信をもって新入社員を迎えてよいのだろうと思います。

* OECD.Stat(https://stats.oecd.org/)“LFS by sex and age - indicators”2023年4月現在