労働法はフリーランスを守れるか ~これからの雇用社会を考える

 人事には関係ない、と言い切れません。

 業務委託契約は、雇用契約と異なりますので労働者の保護とは無縁のはずです。しかし、会社が個人と契約を結ぶ場合、その線引きには曖昧な部分もあります。例えば、ウーバ-イーツやアマゾンの請負配達員は「プラットフォーム就労者」と呼ばれ、その労働者性について議論されることがあります。先行するEU等の事例も踏まえながら、日本の今後についてそのベースとなる情報を整理してくれるのが本書です。

 著者は、「EUでは、2020年前後にプラットフォーム就労者の労働者性を認める最上級審の判例が相次ぎ」、「この問題は収束に向かいつつあります」と述べています。また、EUに注目するのは、「これまで日本の雇用をめぐる状況は、ヨーロッパの状況を約20年後追いするものであった」のが理由とのことです。

 日本でも、いわゆる「フリーランス新法」が成立しました。新法は、フリーランスに対する育児介護等に対する配慮、セクハラやパワハラ等防止措置、契約解除時の30日前予告などを定めており、労働法に似通った部分があります。著者は、「日本のフリーランス新法は、労働者性を広げるのではなく」、「ごく一部の労働法の規制の適用を認めるという、ささやかな保護」だと書いています。

 新法は、2024年11月までに施行される予定ですが、本書を読むと今後の発展を予感させられます。一方、実態は雇用契約であるにもかかわらず、業務委託契約としているケースでは、当然に労働基準法等が適用されます。いわゆる“労働者性”の問題です。人事担当者としてまずは足元を確認する必要があるかもしれません。

著    者:橋本 陽子

出 版 社:筑摩書房

発 売 日:2024年3月

カテゴリー:新(労働法