訴訟リスクを回避する3大労使トラブル円満解決の実践的手法
これは、教科書として使える本です。
著者は、冒頭で「すべての労使トラブルは話合いによる解決が原則」と書いています。労務問題に詳しくない人ほど正義をかざし勝訴を確信する傾向があるように思います。感情が絡んだ裁判ほど、やっかいなものはないかもしれません。著者が言うように話し合いで解決できるのなら、これに勝るものはないでしょう。労使ともに時間とコストを節約することができます。裁判の実務家である弁護士に言われると納得感があります。この書籍は、「パワハラ」、「メンタルからの復職」、「未払い残業代」を3大テーマとして、基本を解説しながらそれらを円満解決するための手法を教えてくれます。中でもメンタル不調者が復職する場合の解説が素晴らしいと思います。
メンタル不調は、目で見えないものなので第3者にはよくわかりません。そして多くの場合、主治医が書いた診断書は意味が取りにくく、復職させて良いものか悩むことになります。その時、産業医から主治医に対して「医療照会」をすることが大切になります。まず、休職者本人から「同意書」を取得し、次に、休職者本人の「職務内容報告書」および「回答書」を郵送、最後に、主治医と面談することが基本手順とのことです。ここでの「回答書」は、事前に設定された項目に対する主治医の回答を記載するものです。主治医の手間ひまを省くことができ、産業医や会社の確認したい項目が載っています。主治医がきちんと対応してくれるか否かは、この段取りにかかっているようです。本書では、書類のひな型を掲載し解説が丁寧にされています。
メンタル不調を原因とする休職や復職の実務で悩む人事担当者は多いと思います。その処方箋として本書をお薦めしたいと思います。
著 者:西川暢春、井田瑞輝、木澤愛子
出 版 社:日本法令
発 売 日:2025年1月
カテゴリー:実務書(労働法)