わかりやすい労働衛生管理 改訂3版

 安衛法(労働安全衛生法)は、わかりにくいと思います。

 労働基準法と条文の数はさほど違いませんが、安衛則(労働安全衛生規則)は600条を超えています。加えて関連規則の多いことがわかりにくさに繋がっているのでしょう。そのため、安衛法を網羅的に解説しようとすると情報量が多すぎるため、内容を浅く止めている書籍が多いように感じます。この書籍は、安衛法の全体像を踏まえながら、適度に深くかつ詳細にはなり過ぎず、適切なボリューム感に留めている点で優れていると思います。

 労働安全衛生管理の分野は変化が激しく法改正もよくあります。従来からの職業性疾病だけでなく、メンタルヘルス、過重労働または産業医に関する対応などは喫緊の課題です。著者は、元労働基準監督官だけあって、この分野に対しても造詣の深さを感じさせます。そして、“かゆいところに手が届く”記述も参考になります。例えば、健康診断の結果と本人同意の関係です。法令の定めがあれば本人の同意なく健康診断の結果を入手することができますが、がん検診等の法定外項目の場合には、原則として本人の同意が必要です。人事担当者が、ふと疑問に思うことについて解説してくれます。

 製造業に携わる安全衛生管理担当者にとっては、ひょっとするともの足りないと感じる部分があるかもしれませんが、オフィス勤務を中心とする会社の人事担当者であれば、問題なく必要以上の情報レベルに達していると感じるでしょう。“わかりやすい”労働安全衛生管理の書籍として、トータルバランスの取れたお勧めの1冊です。

著   者:角森 洋子

出 版 社:経営書院

発 売 日:2024年5月

カテゴリー:実務書(労働安全衛生法)