ベーシック労働法 第9版
「どうか「なるほどわかりやすいな」とみんさんがつぶやいてくれますように・・・。」
これが、著者一同の願いのようです。この書籍には、複雑で難解な労働法をなるべく分かりやすく伝えたいという思いが込められています。
分かりやすく伝えるために、文章は平易な表現が意識されており、とっつきやすくなっています。また、入門書的な位置付けの書籍ですから深く立ち入ることはしませんが、ちょっと気の利いた記述なども散見されます。例えば、「育児休業制度は、スウェーデンの1974年両親休暇法によって創設され、1970年代後半以降にヨーロッパ諸国に」広がったそうです。単なる法律の解説書ではなく、成立にいたった経緯やその背景にある考え方など、“ひとこと”が加わっています。
また、年次有給休暇の時季変更権について、「ここでの「事業」は、個人あるいは職場を単位とした業務ではなく、事業場と解されます。」とした解説が参考になりました。会社が時季変更権を行使できるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られます。「事業」とは何かについて端的に説明する良い例だと思います。
この書籍は、執筆者全員が大学教授ですので、やはり学部の学生を意識した教科書のような位置付けなのでしょう。それと、企業で就業規則等を運用しなければならない新任の人事担当者には、うってつけの1冊だと思います。ベーシックな労働法の入門書としてお勧めします。
著 者:浜村 彰、唐津 博、青野 覚、奥田 香子
出 版 社:有斐閣
発 売 日:2023年3月
カテゴリー:一般書(労働法)