新卒採用と不平等の社会学 ~組織の計量分析が映すそのメカニズム

 新卒採用について執筆した博士論文がベースになった書籍です。

 著者は、東洋経済新報社の「就職四季報 総合版」や「CSRデータ(雇用・人材活用編)」に他のデータを組み合せ、独自に構築したデータセットを用いて分析しています。研究の結果、明らかになったことが提示されており、そのうち気になった2つをご紹介します。

 ●「技術職採用を行っていない企業」と「平均勤続年数が長い企業」では、上位大学からの採用が多くなっていたそうです。換言すれば、「文系の採用」と「大企業を中心とする伝統的な企業」ではシグナリング理論が強く働いているとイメージして良さそうです。

 ●「充実したWLB施策をもつ企業でも、女性採用比率が平均的に高いとはいえなかった」、そして「充実したWLB施策をもつ企業では、業績が悪い時期に、女性採用がむしろ抑制されていた」そうです。「女性の方がWLB施策を利用しやすく、結果として平均的な雇用コストも高いとみなされる統計的差別が働いている可能性がある」と考察されています。WLB施策を掲げたところで「絵に描いた餅」になっている企業が一定程度あるのかもしれません。

 この書籍は、労働政策研究・研修機構の「令和7年度 第48回 労働関係図書優秀賞」を受賞しており、学術的に高い評価を受けています。新卒採用の実務を担う担当者が、自分の仕事について学術的な視点から眺めるというのも面白いでしょう。少々、難しい部分もありますが人事担当者としての見識を高めることに役立ってくれると思います。

著   者:吉田 航

出 版 社:ミネルヴァ書房

発 売 日:2025年3月

カテゴリー:学術書(社会学)