「管理職」とは、微妙な存在ですね。
戦後、管理職である課長までも組織する労働組合が多数存在しました。現代では想像しにくい世界です。この書籍は、管理職の歴史も辿りながらその位置付けと問題点を明らかにしてくれます。
厚生労働省の通達(昭63・3・14基発第150号)には、「監督又は管理の地位にある者の範囲」について、「職務内容、責任と権限、勤務態様」という判断基準のようなものが出てきます。いわゆる「名ばかり管理職」問題を検討する際に知っておくべきものです。名ばかり管理職の問題で悩む企業は多くあるでしょう。労働基準監督署の是正勧告を受けるケースもあります。この問題を理解するにも大変役立つ書籍です。また、管理監督者は事業場の過半数代表者にはなれませんが、例外的に労使協定を締結する過半数代表者になれるケースも紹介されています。
一方、パワハラだと糾弾されることを恐れる管理職が委縮してしまい、満足な指導・教育ができない状況について、「ジョブ型雇用社会においては、上司が部下を「指導・教育」することはそもそも期待されません。採用当初からその仕事ができるのが当たり前だからです。」という記述が出てきます。そして、「部下の採用と解雇の権限を有する者を管理職と呼ぶのであって、その権限を持たないような者は、少なくとも欧米ジョブ型社会では管理職に値しないのです。」と、日本の管理職との違いを実感させられます。
人事担当者にとって問題の本質と今後について学べる書籍です。濱口ファンにとっては、読まねばならない書籍の1冊でしょう。是非、ご一読いただければ幸いです。
著 者:濱口 桂一郎
出 版 社:朝日新聞出版
発 売 日:2025年11月
カテゴリー:新書(労働法政策)
