CASE 01  労基署の是正勧告を円滑に処理したA社

●労働基準監督署の定期調査?

 ある日、所轄の労働基準監督署から 『調査にうかがうので、別紙のリストにある資料を用意しておいてください。』 という電話がA社にありました。その後、約束した日に労働基準監督官が来社し、リストにあった書類を確認のうえ質問をされたそうです。

 対応したA社の人事課長は、労働基準監督署の定期調査だと思い、あまり心配をしていませんでしたが、それとなく質問をしたところ、監督官は社員からの申告に基づいた調査であることをほのめかしました。そして、タイムカードと賃金台帳を確認し 『在社時間と時間外手当が支払われている時間差が大きいので、調査して報告してください。』 と言い残し、その日は終わりました。

 そこで困ったA社は、当事務所に相談をされたのです。

 

●サービス残業の遡及期間

 ご相談をいただき当事務所では、正直に実態を報告せざるを得ない旨をご説明し、ずるずる報告を先延ばしにすることは、心証を害するので避けるべきだと申し上げました。

 A社の人事課長は、この説明内容に納得されましたが最後に一点 『サービス残業の遡及期間について、監督官に判断を仰ぐべきか?』 とご質問されました。そこで、当事務所では 『それは、してはいけません。こちらから遡及期間を確認するのではなく、監督官から言われるまで待ってください。』 と申し上げました。

 なぜなら、時間外手当の支払は民事上のもの(会社と社員の問題)であって、監督官による支払命令はできないからです。こちらから聞けば 『時効になっていない2年分』 という答えがたいてい返ってきます。こちらから聞かなければ、監督官は3〜6箇月分を遡及するようにと言うことも多いのです。

 

●遡及は2年分ではなく、6箇月分で終了!

 A社は監督官の是正勧告に従い残業代6箇月分の遡及支払で、この件を終了することになりました。

 もしあの時、遡及期間について監督官に聞いていたら、どうなっていたか分かりません。結果としては、当事務所にご相談いただいたことが功を奏した案件でした。