CASE 02  営業マンの不満を解決したB社

営業マンに残業代がないことは当たり前?

 B社では、営業マンに定額の営業手当を支給し、時間数に応じた時間外勤務手当を支給していませんでした。ある日、営業部のSさんから 『毎日残業が多いのに残業代が支給されないのは、不公平だ。』 という問題提起があり、営業マンと人事部の関係が少し険悪になったことがありました。人事部では、 “事業場外みなし労働*” という考え方に則り、適法に処理されていることを説明したところ、Sさんは不本意ながら 『法律なら仕方がない。』 と矛先をおさめたそうです。

 

●営業マンの残業問題が再燃

 営業部のYさんは、労務管理の情報に対して興味をもっており、一連の残業問題についてインターネットで情報を収集していました。そして、ある日こう言いました。 『営業マンであっても会社の中で勤務をした場合には、 “事業場外みなし労働*” が適用されず、その部分に対する残業代を会社は支給する義務があるはずだ。』

 そこで困ったB社は当事務所に相談をされたのです。

 

 ●労使協定の改定で対応しましょう!

 ご相談をいただき当事務所では、営業マンの皆さんのご指摘はもっともであり、指摘された法律の内容もその通りだとご説明しました。そこで、改めて “事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定” の締結を提案させていただきました。

 この新しい労使協定は、 「内勤時間の多い日は外勤時間が減ることが想定されるので、内勤時間に応じた事業場外労働のみなし時間を設定する」 というものです。このような労働時間の設定であれば、内勤業務の増加に伴って人件費が高騰することを防ぐことができます。また、 “事業場外みなし労働*” は1日当りの労働時間として “みなす” 必要がありますので、月額固定の営業手当として支給することが難しいものです。そこで、出勤日数により毎月の営業手当を変動させることも提案させていただきました。そうすれば、勤務実績により営業手当が変動しますので、営業マンの理解も得やすくなります。

 労使協定を締結するために、社内で説明会を開き趣旨を丁寧にご説明することで、営業部の社員の方も一定の理解を示されました。このように、労働時間の適正な管理を実施するために、新しく労使協定を締結することで、問題が解決したのです。

 

※事業場外労働(労働基準法38条の 2)の “みなし労働時間制”

下記3つの条件が揃った場合には、実際に働いた労働時間ではなく、労使協定で定めた時間を “みなし労働時間” として、時間外勤務手当を算出することができます。

①労働者が事業場外で労働した場合において、労働時間を算定し難いとき

②その業務を遂行するためには、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合

③ “みなし” の労働時間について、労使協定を締結すること