若者と労働 〜「入社」の仕組みから解きほぐす
「感情論を捨て、ここから議論を始めよう。」 表紙をめくると出てくる文章です。
著者である“hamachan先生”こと濱口先生は、『日本の雇用と労働法』の中で、メンバーシップ型とジョブ型を対比して日本の雇用システムを解説してくれましたが、今回は若年者雇用を切り口として、議論の前提を整理してくれています。
メンバーシップ型雇用のルーツとして、まずは田中 博秀先生の『現代雇用論』から、「日本の企業の人事担当者は、(中略)〜理解していない」と引用し、専門家である人事の中にも昔から多くの誤解が存在することを示唆しています。人事担当者であれば、聞き捨てならない言葉でしょう。この書籍の中で解説される“社員、入社、職業紹介”など、普段何気なく使っている言葉を深く考えていくと誤解の元にたどり着く、ということかもしれません。
全ての働く人にとって“バラ色”であるかは別の問題でしょうが、この書籍で結論として主張される「「ジョブ型正社員」という第三の雇用類型を確立していくこと」は、多くの問題を解決することになり、現状を改革する有力な処方箋だということに異論をはさめる人は少ないのではないでしょうか。
おそらく到来するであろう3つの雇用形態(メンバーシップ型正社員、ジョブ型正社員、有期雇用社員)をどのように活かしていくのかが、これからの人事担当者の課題となるのかもしれません。この課題を表層的な議論で終わらせないよう現状を正確に認識し考えるために有益な書物といえるでしょう。
著 者:濱口 桂一郎
出 版 社:中央公論新社
発 売 日:2013年8月
カテゴリー:新書(雇用システム)