ウソは良くない、これが著者の主張です。

 バブル経済が崩壊した後、1990年代から2000年代にかけて新卒で大学を卒業した人たちを「就職氷河期世代」と呼んだりします。この対策に多額の政府予算が投入されています。しかし、データで確認すると実態はそこまで酷くないようです。著者は、この問題の裏に隠れた非大卒男性と多くの女性に対して予算を振り向けるべきだと主張します。この書籍は、著者の主張を裏付けるデータが盛りだくさんです。メディアの誇張された情報に踊らされる自分を反省するばかりです。

 一方、就職氷河期のウソを立証するために用いられるグラフなどが勉強になります。例えば、4年生大学の進学率がここまで伸びた理由です。「短大卒者の就業条件が悪化したため、短大よりも4大進学を選ぶ女子高校生が増えた。この流れが氷河期に顕著となり、そのまま現在に至る。」と解説されています。主な要因は、女性の進学率です。知っているつもりでも改めて言われることで納得させられます。

 著者は、最後に「独立して20年、こうした滅茶苦茶な雇用論談と政策の瑕疵に向き合ってきたが、政治もマスコミもまったく変わる気配はない。そこにはただただ、忸怩たる思いを感じている。」と結んでいます。同意すると共に少しでも援護射撃になればと思い、ご紹介する次第です。

著   者:海老原 嗣生

出 版 社:扶桑社

発 売 日:2025年9月

カテゴリー:新(雇用・労働