退職届の提出日

Q.退職届は、いつまでに提出すればよいでしょうか?

A.法律上は、2週間前です。

 正社員の退職ルールとして、「従業員が退職するときは、退職希望日の1箇月前までに退職届を提出しなければならない」と就業規則にあるのをみかけます。合意退職の基本ルールを定めたものと考えれば、一種の“紳士協定”といえるでしょう。ただし、法律上のルールは異なります。民法627条第1項には、「解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する」とありますので、退職届を提出してから2週間後には効力が発生すると考えてよいでしょう。これは、2020年4月1日施行の民法の改正部分に関わります。

 旧民法627条第2項には、月給制のように期間で報酬を定めた場合、「解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない」という条文がありました。例えば、毎月1日から月末までを賃金計算期間とする会社で、6月15日までに退職を申し出れば、6月末日に退職することができますが、6月16日に退職を申し出たとすると、退職日は7月末日となります。従業員が退職届を提出するタイミングによって、退職日が変動する規定になっていました。

 改正民法では、この条文が修正され「使用者からの解約の申入れは〜」という文言になり、会社が申し入れた場合に限定されました。結果として、従業員が申し出る場合には、報酬を定めた期間に影響されることなく、解約の申入れの日から2週間を経過することによって退職することが可能です。法律上は、以上のような話になりますが、ルールだからと言うよりは、お互いの妥協点を探るのが王道のような気もします。

 

新卒一括採用の功罪

Q.新卒一括採用を廃止すれば、雇用環境がよくなるのでしょうか?

A.功罪ありますが、若年失業率が高くなる可能性があります。

 新卒一括採用の廃止論者の方がいらっしゃいます。学校を卒業するタイミングで就職できないと正社員になれず非正規労働者として一生働くことになりかねない、などの指摘です。一理あるとは思いますが、大きな弊害を伴うでしょう。日本の雇用慣行として知られる新卒一括採用は、若年失業率を低く抑えることに貢献しているからです。

 OECDのデータベース*では、簡単に失業率を調べることができます。比較可能な最新データについて、先進7カ国の若年失業率(15~24歳)を低い順に並べると、日4.6%、独6.9%、米9.7%、英12.6%、加13.5%、仏18.9%、伊29.7%になっています。若年失業率が高いことに驚かされます。この中では、日本とドイツが比較的低い位置づけになっています。日本は新卒一括採用、ドイツは「デュアル・システム」の影響が大きいといわれています。デュアル・システムは、学校に通いながら企業内で職業訓練を受ける本格的なもので、いわば“手に職をつける”といってもよいでしょう。ジョブ型雇用が中心にある欧米では、仕事経験のない学生は敬遠されることがあるため、デュアル・システムは若年失業率の抑制に貢献しているようです。仮に、ドイツのような方策もなしに、日本が新卒一括採用をやめてしまうと、欧米と並ぶような若年失業率になる可能性があります。

 新卒一括採用には弊害もありますが、世界に誇る日本の慣行だといってよいのではないでしょうか。そして、この慣行を支えているのが企業の人事担当者なのです。自信をもって新入社員を迎えてよいのだろうと思います。

* OECD.Stat(https://stats.oecd.org/)“LFS by sex and age - indicators”2023年4月現在