派遣労働者の36協定

Q.派遣労働者の36協定は、派遣元と派遣先、どちらが適用されますか?

A.派遣労働者は、派遣元の36協定が適用されます。

 派遣労働者を雇用しているのは派遣元事業主ですので、派遣元が労働基準法上の使用者となるのが原則です。しかし、実際に指揮命令しているのは派遣先事業主です。労働者派遣法は、労働基準法の適用の特例として、派遣先が使用者として責任を負う部分を規定し、派遣元と派遣先の分担を明らかにしています(派遣法第44条)。この中で、労働時間、休憩、休日については、派遣先が使用者としての責任を負いますが、36協定の締結・届出に関しては、派遣元が使用者としての責任を負うことになっています。個々の派遣労働者は、派遣先で時間外労働を行いますので、派遣元の36協定を適用するのは不思議な感じもします。

 この点について通達では、「なお、派遣中の労働者が異なる派遣先に派遣されているため意見交換の機会が少ない場合があるが、その場合には代表者選任のための投票に併せて時間外労働・休日労働の事由、限度等についての意見・希望等を提出させ、これを代表者が集約するなどにより派遣労働者の意思が反映されることが望ましいこと。」(昭61.6.6基発333号)とされています。

 以上のように、現行制度では派遣元の36協定が適用になりますので、御社が派遣先事業場なのであれば、派遣元に時間外労働の上限時間を確認し、違法な時間外労働にならないよう注意しなければなりません。

 

労使協定の署名と労働組合

Q.労働協約と労使協定の署名欄は同じ人で良いのでしょうか

A.労働組合が事業所毎に従業員の過半数を組織化していれば、いずれも労働組合の署名で問題ありません。

 労働協約と労使協定は様々な面で異なりますが、文書の署名欄にサインをする人については、その適用範囲という視点で捉えると分かりやすいと思います。

 ある企業にAとB、2つの労働組合がある場合、労働協約は締結した当事者に効力を発揮しますので、会社とA労働組合が締結した労働協約は、A労働組合の組合員には適用されますが、原則としてB労働組合の組合員には適用されません。一方、労使協定はその事業所の全ての従業員に適用されますので、従業員の過半数を代表するものが署名しなければなりません。

 労働組合が事業所毎(別々)に、従業員(有期雇用従業員を含む)の過半数を組合員として組織していれば、労働協約・労使協定いずれも労働組合が締結することに問題はないでしょう。しかし、事業所毎に従業員の過半数を組織していない労働組合は労使協定を締結することができませんので、従業員の過半数を代表する社員個人が署名することになります。労働組合の組織率が20%を下回る昨今では、パート従業員などが組合員として組織化されていないために、36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結することができず、団体交渉が難航するという例もありますので注意が必要です。