評価・人事制度

↓ 以下をご覧ください。

ジョブ型正社員とは

Q.ジョブ型正社員とは、どのような社員をいうのでしょうか?

A.いわゆる正社員と同じく「期間に定めがなく」、かつ、正社員とは違い「仕事に限定性のある」社員といえるでしょう。

 ジョブ型正社員は、限定正社員や多様な正社員とも呼ばれる雇用区分ですが、メンバーシップ型正社員と対比させると分かりやすいと思います。メンバーシップ型正社員とは、人事異動や転勤等がある“いわゆる正社員”のことです。その提唱者である濱口桂一郎先生は、日本の「雇用契約の性格は、一種の地位設定契約あるいはメンバーシップ契約」と考えられるとして、”メンバーシップ型正社員”と名付けたそうです。

 一方、ジョブ型正社員は、その反対ということになります。例えば、技術職という職種の限定があり営業職には人事異動をしない人や、働く場所が限定されていて引越を伴う転勤のない人が、ジョブ型正社員です。つまり、仕事(ジョブ)に限定性がないのがメンバーシップ型正社員の特徴であり、何らかの限定性を伴う労働契約を結ぶ人がジョブ型正社員になります。なお、どちらも正社員なので、雇用期間の定めのない労働契約を前提としています。

 また、労働契約法の改正により5年を超えて反復更新された有期労働契約は、本人の申し出により無期転換することが基本となりました。一般的に、有期労働契約は転勤や人事異動がないなど何らかの限定性を持つことから、この無期転換後の社員を指して、ジョブ型正社員ということもあります。

 メンバーシップ型正社員(いわゆる正社員)は、採用した後にその配属を考える新卒一括採用者がその典型です。反対に、特定の仕事があってその仕事をしてくれる人を採用するのが、ジョブ型正社員です。つまり、「人に仕事がつく」のがメンバーシップ型正社員(いわゆる正社員)、「ジョブに人がつく」のがジョブ型正社員ということもできるでしょう。

 参考:「日本の雇用と労働法」 濱口桂一郎 著

 

雇用区分と法改正の影響

Q.労働契約法や高年齢者雇用安定法の改正は、どのような影響を与えるのでしょうか?

A.正社員や有期雇用社員等、それぞれの役割を明確にする必要性が高まっています。

 企業によって異なるとは思いますが、有期雇用社員が正社員に登用されるハードルは高く、社員登用制度が存在したとしてもガラスの天井に阻まれることが多かったのではないでしょうか(左図左側)。そこで、労働契約法は“無期転換社員”という中間ゾーンを設けることで、正社員化へのハードルを引き下げると伴に、正社員へ転換しない場合でも期間の定めなく安定的に働くことができる雇用社会の実現を意図したわけです(左図右側)。

 一方、高年齢者雇用安定法が改正されたことで、多くの企業で希望者全員(原則)が65歳まで継続雇用されることになりました。これは期間の定めのない正社員が、有期雇用社員に転換することを意味しますので、大きな変動です(左図右側)。

 これらの法改正は、期間の定めの“ある”労働契約と、“ない”労働契約を相互に新しい雇用区分へ導きますので、労務管理は当然に複雑化するでしょう。例えば、有期雇用社員から無期転換した社員は、正社員のように長期間働くことになりますので、モチベーション確保の視点から、定期昇給や退職金制度を導入する必要があるかもしれません。また、長期雇用は長い時間をかけて能力開発をすることができますので、正社員だけでなく“無期転換社員”にも、より重要な仕事を任せることを可能にするでしょう。一方、正社員から定年後再雇用になる社員は、企業の中で次第に大きなウエイトを占めていくでしょうから、この労務管理の上手下手が、会社の業績に影響を及ぼすといっても過言ではありません。

 以上のように期間の定めのアリ・ナシという大きな線引きが変動しているわけですから、改めてそれぞれの雇用区分に対して会社が求める“役割”を明確にすべきタイミングが来たのかもしれません。

 

役割等級制度とは

Q.役割等級制度とは、どのようなものでしょうか?

A.人基準と仕事基準の間に役割基準を設けた制度と言えるでしょう。

 役割等級は、職能等級や職務等級などと比べると新しい部類といえるかもしれません。その実態は企業により千差万別であり定義付けることが難しい部分もありますが、おそらく共通しているのは「役割」という基準を持っていることでしょう。

 役割等級制度は、「人基準」と「仕事基準」の定義をミックスしたものから求められる「役割基準」を作成し、等級の序列感とフィットさせたものだと思います。リンク先にある図は、左に人基準、中央に役割基準、右に仕事基準を置き、人事制度の三大要素である、等級、評価、賃金との関係を表現したものです。

 人基準から作成する代表的な等級制度が職能等級制度といってよいでしょう。柔軟な運用ができる反面、年功的に運用されると人件費の面で経営を圧迫することが問題になります。一方、その対抗馬としてよく挙げられるのが仕事基準である職務等級制度です。洗い出した職務を序列化し、等級区分にまとめたものを作るのが一般的でしょう。仕事と賃金がマッチする反面、仕事分担の融通性やポスト不足への対応が困難で、社員の“ヤル気”を向上させにくいと思われます。

 役割基準は、これらの人基準と仕事基準の持つメリットを享受した折衷案と言うことも可能でしょう。なお、役割等級制度は、いいとこ取りをした結果どのようにも運用することが可能な制度ですので、管理職の運用能力が問われる制度と言えるかもしれません。

 

等級制度と役職制度の違い

Q.等級制度と役職制度は異なるものなのでしょうか?

A.等級制度は人事制度上のもの、役職制度は組織上のもの、ということができます。

 多くの企業では、人事制度の一部として等級制度が定められています。例えば、職能資格制度であれば、「一般従業員層である間は、能力の進捗を測るマイルストーン」、「管理職層の場合には、組織上のポスト不足に対応するモチベーションの確保策」として効果を発揮すると考えられます。

 一方、役職は組織上の要請で与えられるもの、つまり、部下を持つ管理職を念頭においたものであり、従業員区分である等級制度とは似て非なるもの、といって良いのではないでしょうか。要するに、組織図上に部署があるから、その部署を管理する従業員=管理職が必要になるわけです。

 等級制度は、役職だけでは処遇しきれない部分に対して、よりきめ細かな対応を可能とするものであり、一定規模の企業では欠くことのできない人事制度といえるでしょう。

 

役職定年制のメリットとデメリット

Q.役職定年制のメリットとデメリットを教えてください。

A.メリット=人事の活性化、デメリット=年配者のモラールダウン、といったところでしょうか。

 役職定年制は、団塊の世代を中心とした社員構成の高齢化に伴うポスト不足への対応策として、90年代に脚光を浴びた人事制度です。(財)労務行政研究所が2010年1月に実施した「人事労務諸制度実施状況調査」で、役職定年制の実施率は28.1%であり減少傾向が続いています。年齢ではなく成果による処遇がクローズアップされた時代を経た現在では、その重要性は薄くなってきているように感じます。

 メリットとしては①人事の停滞解消、②人事の若返り・抜擢、③人件費の有効活用が挙げられますが、デメリットとして、①役職定年に近い役職者のモラールダウンから組織全体の生産性が低下する危険性、②特定人物の例外による制度の形骸化、③役職定年者の再配置および業務設定の困難さ、④役職定年に近い上司の命令に従わない部下の可能性が挙げられ、これから導入するには、弊害が目につく制度になっているような気がします。

 

職務評価と役割評価の違い

Q.役割評価と職務評価は、どのように違うものなのでしょうか?

A.企業によって様々だと思いますが、職務評価は“仕事基準”であり、役割評価は“仕事+人基準”だと言えるでしょう。

 評価制度にもいろいろありますが、能力評価や職務評価と比べて、役割評価はまだ新しい制度と言えるかもしれません。役割評価は、ファジーな“役割”に基準を置くため企業によって千差万別になっているのだと思いますが、能力評価と職務評価をミックスしたものといえるのではないでしょうか。

 左図は、左に人(能力)基準、中央に役割基準、右に仕事(職務)基準を置き、人事制度の三大要素である、等級、評価、賃金との関係を表したものです。人(能力)基準で評価する代表的な評価制度が能力評価ですが、柔軟な運用ができる反面、年功的に運用され人件費の面で経営を圧迫することが問題になりました。

 一方、その対抗馬としてよく挙げられるのが、職務評価です。担当した職務を評価するので、仕事と賃金がマッチする反面、仕事分担の融通性やポスト不足への対応が困難で、社員の“ヤル気”を向上させにくいと言われています。また、本来の職務評価は、仕事の出来栄えを評価するものではなく、仕事そのものの価値を評価する点に注意が必要です。

 役割評価は、能力評価と職務評価の持つメリットを享受した折衷案と言えるでしょう。また、能力評価と職務評価のいいとこ取りをした結果、どのようにでも運用することが可能な評価制度ともいえます。役割評価は、管理職の秀でた運用力が試される評価制度なのかもしれません。

 

コンピテンシー評価と能力評価の違い

Q.コンピテンシー評価と能力評価は異なるものなのでしょうか?

A.相違点はありますが、どちらも能力を評価することに違いはないと思います。

→ 関連資料

能力評価は過去のものだが、コンピテンシー評価は新しい概念であり今の時代にフィットしている、などという話を聞くことがありますが、本当でしょうか?

 コンピテンシーの考え方はアメリカで生まれたもので、1970年代には、ホワイトによって既に提唱されています。その後、マクレランド、スペンサーなどの人物が登場し、コンピテンシー理論を発展させてきたと言われています。コンピテンシーをコンピテンスという人もいますし、発音のアクセントの置き方も人によって違うようですが、和訳すると“能力”になります。

 一方、能力評価は、能力に関する評価基準を作成し運用することで、定性的な評価対象でありながら、納得感を持たせようとしたものです。しかし、能力評価は可視的で把握しやすいものに限られてしまい、能力の源泉部分を評価することが困難でした。

 コンピテンシー理論を発展させたマクレランドの氷山モデル(左図)によると、目に見えている氷山の部分だけでなく、海中に沈んでいて見ることができない要素であっても、コンピテンシーを用いることで、把握することが可能だそうです。

 能力評価が、潜在能力ではなく観察可能な顕在化した能力(知識・技術)を重視することに対して、コンピテンシー評価は、海面下にあって見えないはずの“動機や特性”にもスポットを当て、可視的な行動特性として捉える点が相違点といえそうです。

 コンピテンシー評価が万能だという考え方には反対ですが、目で確認することができる行動特性に注目したことは、能力評価を一歩進めた、優れた点のように感じます。

 

コンピテンシー評価の作成手法

Q.コンピテンシー評価の項目は、どのように作るものなのでしょうか?

A.一般的には、ハイパフォーマーのコンピテンシーを抽出して評価項目にする。 といいますが・・・。

 コンピテンシーという言葉と一緒によく出てくる言葉に“ハイパフォーマー”がありますが、ハイパフォーマー=成績優秀者ということでよいのではないでしょうか。以下、コンピテンシーの評価項目の作成手順を示しますが、これは最大公約数的なものといってよいでしょう。

社内でハイパフォーマーと言われる複数の従業員にヒアリングをして、その行動パターンを抽出
ハイパフォーマーの行動パターンを集約・整理し、評価項目のベースとなるコンピテンシー・ディクショナリーを作成
コンピテンシー・ディクショナリーから、該当する職種にフィットするコンピテンシーを選択し、職種別に評価シートを作成

 このコンピテンシー(評価項目)の達成を目指すことで、標準的な従業員でも成果が出やすくなるわけです。

 本当にそうなのでしょうか?ハイパフォーマーのマネをすれば、業績が出やすくなるのでしょうか?

 私は思います。AさんにはAさんなりの、BさんにはBさんなりの業績を導き出す手法があるのだと。優秀者の行動パターンを参考にすることまで否定はしませんが、過信は禁物です。ですから、ハイパフォーマーの行動パターンというよりは、その仕事なりの“あるべき行動様式”を社内で議論して、コンピテンシー項目を作成することの方が重要だと思うのですが、いかがでしょうか。

 その場合には、考えられる行動パターンから仮のコンピテンシー項目を作成して、社内でアンケートを実施します。その結果から得られたコンピテンシー・ディクショナリーを原案にすれば、議論が活発になりやすく納得感のある評価項目の作成につながると思いませんか?

 完璧な評価制度が存在しないことは誰でも知っているはずですが、“コンピテンシー”というカタカナが万能なものだと過信することのないよう注意が必要だと思います。

 

360度評価の使い方

Q.客観的で公平なものとするために、360度評価を用いるのはどうですか?

A.100%の客観性・公平性を求めるよりも、妥当性のある上司の評価が大切でしょう。

 評価制度は、客観的で公平であることが重要だと言われます。確かにその通りでしょう。それを実現するために、360度評価(多面評価)を用いる会社もあります。360度評価は、被評価者の上司・同僚・部下から多面的に評価される制度であり、被評価者へ“気づき”を与えることに有効です。周囲からの視線について、被評価者に気づかせることで育成につながります。管理職への昇進時に活用すると有意義だと思います。管理職は、自身の業績だけでなく部下を育成する役割を担うからです。

 一方、360度評価が直接処遇に反映されるケースは多くないようです。そもそも、評価をするためには被評価者の仕事を十分に理解している必要があります。その仕事を被評価者に与えているのは直属の上司です。上司と部下は、命令と報告の関係で結ばれており、この関係の間に第三者は介入できません。つまり、部下の仕事を一番よく把握し責任を負っているのは、命令した当事者である上司だけです。

 評価が客観的で公平であることは理想ですが、部下を評価できるのが上司だけだとなると、神様ではない人間のすることですから、データを活用するにしても上司の主観で判断せざるを得ません。ただし、上司によってこの主観に大きな格差が存在すると組織として大きな問題になります。そこで、会社は考課者訓練などで上司の主観(評価眼)を一定レベルの範囲内に調整しようとするわけです。人間誰しも甘い・辛いがあるものです。組織としてコントロールされた上司の主観を用いることが、合理的なことのように思われます。

 

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